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タイセイ飼料株式会社

獣医/分娩の管理(31) ―次の妊娠・分娩へ向けて(6)

––– 分娩前の母牛の栄養管理 (まとめ) –––
 これまで数回にわたって、次期の繁殖に向けて分娩前の母牛の栄養管理をどのように実施していけば良いのかをご紹介してきました。今回はその内容をもう一度コンパクトにまとめると同時に、個別のコラムでは記載できなかった基準値や目標値をご紹介していきたいと思います。

 まずはかいつまんでこれまでの内容をまとめますと、以下の4点になります。

● 分娩遅延や難産を防ぐ
 エネルギーとタンパク質の不足に注意する。目で見ては分からないくらいでも分娩前に痩せていくような栄養状態では分娩が遅れ難産につながる。難産につながる理由としては胎子の骨格だけが大きくなることや母牛の筋肉量不足が考えられている。
(http://www.taiseishiryo.jp/tp_detail.php?id=84)

● 胎盤停滞を防ぐ
 胎盤停滞の原因は多岐にわたるが、胎盤を子宮から剥がすのに重要な免疫担当細胞の一つである好中球の機能を高く保つために、ブドウ糖・カルシウム・ビタミンEを充足させる。
(http://www.taiseishiryo.jp/tp_detail.php?id=84)

● 子宮内膜炎を防ぐ
 臨床症状を伴わない潜在性子宮内膜炎は治療されず見過ごされることが多いため、繁殖に大きな悪影響を与える。予防のためには分娩前から免疫細胞の機能を高めておくことが重要で、そのためには上記の胎盤停滞予防と同様にブドウ糖・カルシウム・ビタミンEを充足させる。
(http://www.taiseishiryo.jp/tp_detail.php?id=86)

● 排卵遅延など卵胞への悪影響を防ぐ
 卵胞の発育には60-90日必要なので、分娩前からエネルギー源である糖を充足させる。
(http://www.taiseishiryo.jp/tp_detail.php?id=87)

 これら4つのポイントだけが全てではないと思いますが、上記の点を分娩前飼養管理において重点的に実施することは、分娩後の繁殖性改善につながる可能性が高いと考えられています。

––– 各栄養素の基準値や目標値 –––

 4つのポイントを現場で実際に実施していくにあたっては、以下の基準値や目標値が各所から示されています。
ただし、和牛繁殖におけるMP給与量はホルスタインの推奨値から母体や胎子の体重を勘案しての換算値であり、その是非や妥当性は今後検証の必要があることを申し添えておきます。

【エネルギー指標(分娩1-3週間前の血液検査)】
・血糖値 (Glucose): 55-70 mg/dL
・トータルコレステロール (T-Cho): > 75 mg/dL
・非エステル型脂肪酸 (NEFA): < 0.40 mEq/L

【タンパク質】
・MP給与量(ホルスタイン): 乾乳前期1,100〜乾乳後期1,200g/日
・MP給与量(和牛繁殖): 800g/日(ホル推奨値より換算)

【カルシウム】
・血清カルシウム濃度: 9.0 -10.0 mg/dL
(< 8.0 mg/dLは潜在性低カルシウム血症)

【ビタミンE (酢酸dl-αトコフェロールとして1mg = 1IU)】
・血清ビタミンE濃度: > 300 µg/dL
・ビタミンE給与量: 2.5-5.0 mg/kg体重/日

※各数値は以下の参考文献から引用し弊社顧客農場でもその効果/有効性を確認しているものを記載していますが、最新の研究報告等により今後改変される可能性があることにご留意ください(2022年11月)

獣医/分娩の管理(31) ―次の妊娠・分娩へ向けて(6)

― 参考文献―

(1)PennState Extension, 2013. Metabolic Profiling. Nov. 11.
(2)Kida, 2002. Use of every ten-day criteria for metabolic profile test after calving and dry off in dairy herds. J. Vet. Med. Sci. 64(11):1003-10.
(3)黒崎, 2014. 飼養管理による乳牛の低カルシウム血症予防を考える. 産業動物臨床医学雑誌. 5(3):168-176
(4)Goff, 2008. The monitoring, prevention, and treatment of milk fever and subclinical hypocalcemia in dairy cows. Vet J. 176(1):50-7.
(5)Haga et al., 2021. The Physiological Roles of Vitamin E and Hypovitaminosis E in the Transition Period of High-Yielding Dairy Cows. Animals. 11(4):1088.