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タイセイ飼料株式会社

酪農コラム/脂肪の代謝2ー乳脂肪の合成(1)

はじめに
 乳脂肪は乳中で最もエネルギーの高い要素であり、泌乳する動物にとって乳脂肪の生成は最も代謝上の負荷が大きいものです。乳脂肪の低下が起きるのは、代謝上のストレスを低下させるための動物の戦略です。例えば、分娩直後に泌乳し始めるとき、もしくは栄養不足の時には、このような現象が起こります。

 暑い夏の時期にはどこの牧場においても普通に見られることですが、乳脂肪の低下(Milk Fat Depression, MFD)は代謝に関連する原因と牛の管理に関連する原因のいくつかがからみ合って乳脂肪の合成に影響を与えることにより発生します。乳脂肪の数値は、乳牛が概ね健康かどうかの指標となり、また牧場の管理方法のために有効な情報を提供してくれます。

酪農コラム/脂肪の代謝2ー乳脂肪の合成(1)

 乳価を決定するシステムは世界中に様々なものがありますが、多くの国々の方式において乳脂肪は乳価の決定に大きく影響します。乳脂肪率と乳量の低下はその牧場の収益に直接にマイナスの影響をもたらします。

 過去に、搾乳前後や生乳の貯蔵、移送中に倫理的に問題のある方法で乳脂肪を操作しようとしたケースが多くありました。例えば、分析のためにサンプルを採取する1~2日前から飼料の量を減らしたり、生乳のバルクタンクにバターを入れたりといったことが行われました。飼料摂取量を抑えると体脂肪が動因され、一時的に乳脂肪率が上昇します。

酪農コラム/脂肪の代謝2ー乳脂肪の合成(1)

 酪農に関わる科学者にとって、乳脂肪が低いことは過去150年以上に渡って頭を悩ませる現象でした。フランスの化学者(Boussingault, 1802-1887年)が世界で最初に乳脂肪の低下を1845年に報告しました。彼はビート(甜菜)を含む飼料を給与した牛で乳脂肪が少なくなることを発見しました。1926年にはイギリスの研究者たちが乳中の脂溶性ビタミン濃度を変化させようと試みる中で、乳牛にタラの肝臓油を含む飼料を給与すると極端に乳脂肪が低下することを発見しました。1939年のニューヨーク・ワールド・フェアではロータリーパーラーが展示され、乳牛にペレット化した粗飼料と大量の穀類を含む飼料を給与したところ深刻な乳脂肪低下が起こり、展示は中止となりました。これらのような事例以来、科学者たちはその現象を引き起こすメカニズムを解き明かそうと努力してきましたが、近年までその成果は乏しいものでした。

 過去150年の間、乳脂肪低下を説明しようと様々な仮説が提示されました。そのうちの多くは1種類もしくは複数の飼料や栄養素のルーメン代謝に関連したものでした。例えば、1940年代にはルーメンでの揮発性脂肪酸(VFA; 酢酸、プロピオン酸、酪酸のこと)の不足または過剰が原因とする説、1970年代にはルーメンで脂肪酸が水素添加されることが原因とする説、近年ではルーメンで生成されるリポ多糖類による炎症反応が乳脂肪低下の原因とする説が提示されました。これまでのところ、最も説得力のあるのはルーメンでの水素添加説です。この水素添加(脂肪酸の二重結合に水素をくっつける)プロセスは毒性のある多価不飽和脂肪酸を中和する自然なプロセスで、飽和脂肪酸を作り出します。しかし、乳牛が過剰な脂肪や油脂を摂取すると、水素添加プロセスにより異なる脂肪酸が作られます(CLA;共役リノール酸)。放牧などで生草を食べたり、穀類が多く粗飼料が少ない飼料を給与されたり、ルーメンアシドーシスを引き起こすような状態だとCLAの生成が増えます。多くの研究において、ルーメンでCLAの生成が増えることが直接的に乳脂肪の生成を抑制することが明らかになっています。CLAは人間のガンの発生を抑える効果があることが判り、広く注目されています。自然界の中ではCLAが最も多く含まれるのは反すう動物の肉と乳製品です。

酪農コラム/脂肪の代謝2ー乳脂肪の合成(1)

酪農コラム/脂肪の代謝2ー乳脂肪の合成(1)

(つづきます)