トピックス

北海道十勝地方における飼料の専門会社。安全、安心な飼料ご提供を第一に、畜産家の皆様や消費者の皆様のご要望にお応えします。

  1. home

会社案内

タイセイ飼料株式会社

酪農コラム/蛋白質~非蛋白態窒素の利用~(3)

現場の実例
 日本では尿素はおよそ15-20年前に乳牛の飼料に使われました。その後、いくつかの乳牛の牧場において急性尿素中毒の発生の報告があり、徐々に乳牛の給与メニューからは消えていきました。

 近年では、蛋白質源の価格が増加し、安価な窒素源として尿素の利用が再度注目されてきました。またルーメンでゆっくり分解されるように加工された新しいタイプの尿素も市場で流通しています。しかし、加工された尿素を使用する前に、MUNレベルおよび牛群のその他のパラメーターをきちんとモニターすることを推奨します。

酪農コラム/蛋白質~非蛋白態窒素の利用~(3)

乳牛と窒素の利用
 飼料中の蛋白質は、大きく2つに分けられます(TP、NPN)。TPは、ルーメン内で発酵される蛋白質(RDP)と発酵されない蛋白質(RUP)に分けられます。RDPは、ルーメン内でアンモニアに変換されます。一方、RUPはルーメンを通過(バイパス)し、小腸でアミノ酸に分解されます。ただし、一部のRUPは小腸で吸収されずに糞中に排泄されることもあります。

 NPNは、全て急速にアンモニア(NH3)に変換されます。ルーメン内微生物は、このアンモニアとNFC源を利用して、微生物態蛋白質(MCP)を合成します。この微生物態蛋白質は小腸に流入し、TPとして利用されます。

 血液中に吸収された過剰なアミノ酸は、肝臓でアンモニアに分解され、肝臓と腎臓で尿素が合成されます。この尿素は、①尿、②唾液、③MUNといった 3つのルートで体外に排泄されます。反芻動物の窒素要求量のおよそ10~12%は、唾液に含まれている尿素から供給されます。この窒素の循環により、生産性の低い反芻動物では、飼料中のタンパク質が少なくても、体を維持することができます。

酪農コラム/蛋白質~非蛋白態窒素の利用~(3)

MUN(乳中尿素態窒素)
 MUNは、牛乳中の尿素態窒素濃度を表したもので、牛が摂取した粗蛋白質がどのように利用されているかを表します。ホルスタインにおいて、MUNの値は5~20 mg/dlの間で変動します。最適なルーメンのアンモニア濃度(11~13mg/dl)とMUN(10~12mg/dl)の値は似ております。うまくバランスのとれた飼料ではMUNの変動は10-12mg/dlに収まります。しかし、(a)過剰なRDPや(b)過剰なRUP、(c)RDPとNFCのバランスがうまく取れていない場合にはMUNが大きく変動します。これらの場合、利用されない飼料中蛋白質は、ルーメンでアンモニアへ変換し、血液中へ吸収、肝臓で尿素へ変換後、最終的に血液や尿、乳中に現れます。MUNレベルの解釈は注意が必要です。なぜなら、飼料組成に加え、MUNは季節、品種、産次数、搾乳頻度、分娩後日数、生産性レベル、サンプリングのタイミング(午前VS午後)などの影響を受けるためです。

まとめ
 非蛋白態窒素は反芻動物において安価な窒素源となります。非蛋白態窒素の代謝とその副作用についてしっかりと注意すれば非常に有効な栄養となります。

 しかし、理解不足や単純なミスによって、動物の命や農場の生産性を壊滅させることがあります。

酪農コラム/蛋白質~非蛋白態窒素の利用~(3)

(おわり)